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「川の流れのように」

記事:布教師 安田真明

 令和に入り、4年の月日が流れました。私は昭和の生まれですので振り返る思い出は昭和時代の事が多くあります。

 皆さんは昭和の大歌手美空ひばりさんを御存じでしょうか。ひばりさんは、魚屋の長女として昭和12年横浜で生まれ、52才で他界されました。横浜の唱導寺という日蓮宗のお寺が美空ひばりさんの菩提寺です。

 芸能生活40年という人生のほとんどを華々しい世界で過ごされ、私生活でも波乱万丈の人生でした。50歳の時、慢性肝炎を発症し死を覚悟され、そのころから信仰熱心になり病気と闘いながらコンサートに立たれていたそうです。コンサートの控室では身体がもつように、無事に成功するようにと、菩提寺の住職にご祈願をして頂いての出演だったそうです。

 ファンの前で「大好きなお酒は止めますが、歌は辞めません。」と宣言され、住職に飲みかけのヘネシーのボトルを預けられたそうです。人は誰もが苦しいとき、迷った時、神仏にすがりたくなるものです。ひばりさんは法華経、お題目に心の安らぎと救いを求められました。

 ひばりさんの最後の曲は「川の流れのように」ですが、当時別の曲を発売することが予定されていたのを、ひばりさんたっての希望で「川の流れのように」に変更されたそうです。ご自身の人生とはうらはらに法華経、御題目を信仰することによって、日々静かに過ごしたいというひばりさんの強い願いが込められた歌だそうです。
  「知らず知らず歩いてきた 細く長いこの道 振り返ればはるか遠く 故郷が見える…雨に降られて ぬかるんだ道でも いつかはまた 晴れる日がくるから ああ川の流れのように おだやかに この身をまかせたい…」
 ひばりさんは今、実家の見えるお墓で静かに眠っています。

 日蓮大聖人は『妙心尼御前御返事』で
  「又このやまひは仏の御はからひか。そのゆへは浄名経・涅槃経には病ある人仏になるべきよしとかれて候。病によりて道心はをこり候歟。(このたびのご病気は、仏のお計らいによるものかも知れませんよ。なぜなら、浄名経や涅槃経には、病気にかかった人こそが仏になれると説かれているからです。病気で悩むことによって仏道ごころが芽生ええるというわけでしょう。)」
と仰せられています。

 私たちは日頃から健康を願いますが病になって初めて気づくことがあります。その時、病は導き手になり、苦しいことほどたくさんの気づきがあるのではないでしょうか。

 ひばりさんがお亡くなりになって33年経った今でも、6月24日には全国各地からファンが集まり、お題目を信仰している人もそうでない人も、ひばりさんがお唱えしたお題目を心一つにしてお唱えされています。ひばりさんは亡くなられて今なお多くの人達にお題目のご縁を結び、ひばりさんのお題目信仰が川の流れのように静かに引き継がれています。

 『上野殿御返事』で「水のごとくと申すはいつもたいせず信ずるなり。」と、川の流れのように退くことなく信仰する姿勢が大切だと教えてくださった日蓮大聖人の御教えに重なる気がいたします。

南無妙法蓮華経


※本文中の歌詞の引用は美空ひばり「川の流れのように」作詞:秋元康、作曲:見岳章

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